就職活動中の大学生や新入社員は言うまでもなく、中にはベテランの社員ですら企業が社員に対して教育プログラムを用意してくれることを期待しているでしょう。それに対して多くの企業が当然のように教育プログラムを用意していることをホームページ等に掲載して対外的にアピールしています。社員教育に企業が責任を持つのが当たり前というのが当今では大勢のようです。

もちろん僕たちも社員教育は企業が責任を持つべきだと考えています。ざっと考えられるだけでも以下のような理由が思い浮かびます。

① 個別の企業に最適化されたスキルや思想はその企業でしか身につけられないから。
② 教育プログラムを期待する社員の離職率を下げるため。
③ 教育プログラムを期待する求職者に対する訴求効果。
④ 社員教育に企業が責任を持つべきという考えが大勢なので教育プログラムの有無がIRに与える影響を無視できない。
⑤ 社員を路頭に迷わせないため。

①~④は説明不要でしょう。⑤についても説明不要かと思いますが念の為に説明しておきます。数十年間もずっと同じ会社に所属しているのに新人や若手社員と同じような水準の仕事しかできない人がどこの会社にもいるものです。この数十年の間にスキルが磨かれて他社からも引く手数多の人材になってくれればいいのですが、実際には多くの人がそうはなりません。残念なことにこのような人は次の仕事が見つからないので、退職金を上乗せして早期退職を募ってもなかなか応募してきません。また、他社や子会社への出向という形でリストラしたくても受け入れ先が見つかりません。なぜなら、新人や若手と同程度の仕事しかできないからです。仕事の程度が同じなら若い人を雇いたいと思うのはどこの会社も同じでしょう。大企業であってもこのように何のスキルも磨かれずに受け入れ先のない社員がいます。本人の努力が足りなかったと言ってしまえば企業としては楽です。しかし企業の都合で企業が使いたい場所にその人を配置してきたのかもしれません。何も教育機会を与えないで企業の都合でいいように使っておきながら、使えなくなったからと言ってポイ捨てしていてはたくさんの社員が路頭に迷うことになります。リストラするにしても社員がスキルフルで次の受け入れ先があるのであれば労働組合との交渉の余地もあるでしょう。しかし、次の受け入れ先のない社員をたくさん抱えてしまうと労働組合との対立が深まって企業活動が停滞する原因になりかねません。

以上の他にも会社が社員を教育する様々な理由があるでしょう。いずれをとっても社員教育に責任を持った方が企業にとってメリットがあると言えそうです。もちろん教育を受けることができる社員にとってもメリットがあるでしょう。

しかし、社員の側が企業は教育に責任を持ってくれると期待しすぎるのは非常に危険です。なぜなら、企業が行う教育プログラムはあくまでも営利活動の一部であるからです。
企業は教育プログラムの効果を最大化するために

① 誰を教育するか
② いつ教育するか
③ どのような教育をするか
④ どうやって教育するか
⑤ どのような目的で教育するか
⑥ 何を教育するか

といったことを常に考えています。(もしあなたの会社はそんなことを考えていないというのなら、これからは考えてください。)ですから、社員が①~⑥に合致しなければいつまでも教育を受けられないことになります。また、合致してもその教育で獲得したスキルがその企業の中でしか使えないものであったり、限定的なものだと結局リストラ等の対象になった時に路頭に迷うことになります。

当たり前のことですが、忘れがちなので再度確認しておきます。会社が社員を教育するのは会社のためであって社員のためではありません。だからこそ会社は社員の教育に責任を持てるのです。

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