頑張ればうまくいくのか?―個人と集団、個人と環境―
日常で、何かを達成したい。今できないことをできるようになりたい。そう思うことは、大小も実現性も様々でも、当然ながら誰しもあるのでないでしょうか。
さて、何か成したい、達成したいと思うとき、それを最も左右するのは何なのでしょうか。
あまりに漠然とした問いかもしれませんが、多くの人はきっとこう答えるのだと思います。
「とりあえず、努力することである」
ごく普通にみえるこの意見の根底には、ある前提、というか思想とすら言えるものが隠されています。
・・・さて、今回問題にしたいのは、「頑張れば、夢は叶う」のか?ということです。
少し意味はズレますが、似たようなことが、経営学でも昔から取り上げられてきました。
どうすれば企業は成功できるか?経営学は初期からこの問いに対する答えを探してきました。そして、多くの支持を得るような答えを生むこともできました。
多くの支持を得た代表的な学者に「組織は戦略に従う」で有名なチャンドラーがいます。チャンドラーはおおまかに言うと企業がどのような戦略を採り、そしていかにその戦略に沿った組織体制を構築するかが重要だ、と説きました。なるほど、もっともらしいですね。またこの理論自体は多くの実証を得ており、妥当性も高いといえます。チャンドラーの言説をまとめるとこうです。
「企業は戦略―理想への道筋―に対して相応しい組織体制を採ることで成功を収めることができる」(もっと言うと、それさえすればいいんだ、くらいの勢いでこの説を推しました)
チャンドラーはまた、戦略はいくつかの類型化が可能で、そのパターンに適した組織体制というものも考えつきました。より実践的で解り易いタイプ分けをしたのです。
しかし、妥当にみえるこの意見に対し、チャンドラーはある重要なことを無視しているのではないか?という指摘を受けます。何でしょうか?
ディマジオとパウエルという人がいました。彼らは、ある企業の調査をしていく中で、あまりにも多くの企業が当時流行していた「事業部制」を採り入れ、かつ全く機能していないことに気付くのです。
事業部制というのは、多くの企業で成功例が得られた有力な組織体制のひとつです。チャンドラーの言説に従うと、この組織体制を敷いておきながら全く機能していないというのは不思議なことに思えます。
そしてディマジオとパウエルは、調査を進める中で、この事業部制導入の原因を突き止めます。
「あるコンサルティング会社に勧められるままに、事業部制を導入した」
このような回答が多く得られたのです。
ディマジオとパウエルは色々な意味で驚愕します。そして、気付くのです。
「もしかしたら、企業は有効な戦略がどうこうとかの前に、主体的な意思決定すらしていないのではないか?」
そうして生まれたのが「新制度派組織理論」と呼ばれるものです。要約すると、
「企業が成功するかどうかは環境に左右されている。外部環境に因ってでしか、成功的な戦略も組織体制も決定できない」
というものです。
さて、言いたいこととは。
果たして、成功への「ワン・ベスト・ウェイ」は存在するでしょうか?
個体が頑張りさえすれば、成功は保証されるでしょうか。
いっぽうで、環境の支配力はすさまじいものがあります。
でも、個体はただ環境に支配されるものなのでしょうか?環境ってなんでしょうか?
・・・さて、多くの問いを投げかけましたが、
「成功にむけての個人(個体)と環境/集団」
は、現在の経営学での主要なトピックになっています。
今後もそういったことに触れていこうと思います。
人気ブログランキングへ